大友克洋を総監督に、3人のクリエイターが異なったスタイルの映像世界を作り上げたオムニバス。
公開当時(1995年)スクリーンで見たのですが、アニマックスチャンネルで11年ぶりに見る機会があったので、改めて感想などを。
◆彼女の想いで 【監督:森本晃司】
宇宙のゴミ回収業者4人組はある日、朽ち果てた古い宇宙船からの救難信号を受信し、中へ入る。
そこで彼らは不思議な世界に巻き込まれる。
しかしそれは今は亡き天才ソプラノ歌手の記憶が作り出した幻影の世界だった…。
脚本を「パーフェクトブルー」「東京ゴッドファーザーズ」「妄想代理人」の今敏が担当。
SF的な世界の中で繰り広げられる「不思議の国のアリス」のような世界に、見る者も主人公と同じ目線で巻き込まれていくような、幻想的な作品。圧倒的なディテールの映像に翻弄されます。
公開当時記憶に残ったのは巨大なバラの形をした巨大宇宙船のCG映像で、今見てみるとセルアニメの部分と映像がうまくなじんでない。浮いて見えるんです。でもそこがいいっていうか、朽ち果てた宇宙船の不気味さ、どこか現実でない感じがすごく表現されていると思う。
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◆最臭兵器 【監督:岡村天斉】
カゼ薬と間違えてあるカプセル状の薬を飲んでしまった男が、猛烈な異臭を放つ殺人兵器となってしまう。
彼を止めるべく自衛隊や米軍まで出動し街中がパニックになっていく様をこれでもかというぐらい面白おかしくドタバタコメディに仕立てていて、公開当時も今も爆笑しながら見てしまった。
他の二作とは対照的で、徹底的に娯楽性を追及した作品になっています。
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◆大砲の街 【監督:大友克洋】
「大砲を撃つ」ことだけで成り立っている街、「移動大砲都市」に暮らす家族の一日を描いた作品。
後のスチームボーイの原点となったと言われている作品で、この作品のみ、大友自身が監督。
全てワンカットでシーンに切れ目がないという撮り方と、東欧の短編実験アニメのような独特の質感のある映像が印象的な作品。
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今回見て改めて強い印象を受けたのはこの「大砲の街」です。
ここの住人たちは「大砲を撃つ」ためだけに暮らしている。主人公となる少年は学校で大砲の撃ち方に関する授業を受け、父親は大砲を撃つ仕事に従事し、母親はミサイル工場で働いている。
物語の中ではいったいこの街がどこと戦っているのか、何の為に毎日大砲を打ち続けるのかが明示されない。唯一テレビのニュースで「○○街に壊滅的な打撃を与えた」というアナウンスがあることで、それとなく暗示されるのみ。
この作品世界では全ての価値観が「大砲を撃つ」ことを中心に社会が形成されていて、他の産業や文化が存在するかどうかも、この短い物語の中では提示されない。
実際に大砲を撃つシーンがあるのですが、その先に当然存在するであろう「敵」というものも描かれないので、観客は「どこに向かって撃っているの?」という疑念を抱きながら見続けることになる。
こうして一番肝心の部分を描かない、説明しないってことで、それは必然的に観客の想像に委ねられる。それがこの作品の一番面白い部分になっているのかなあと思います。
これをある種の風刺としてみることもできるでしょう。つまり、現代における戦争や軍備といったものへの風刺。もしくは、「大砲を撃つ」という行為を、何か他のものと置き換えてみてもいい。例えば現実社会における私達の様々な経済活動や、会社に行く事とか学校に行く事になぞらえて見ても面白い見方ができるかもしれない。
こういう作品を見ると、物語の中で全てを説明したり描いたりする必要性って必ずしもないんじゃないか、と思えてきます。もちろん作品の性格にもよるんですが。
あえて”描かない”ことで、あとは観客の想像に委ねる。見る人がその余白を積極的に埋めようとすることで様々な広がりが生まれて、面白いんじゃないかなあと思います。
"皆まで言わんでも"ってやつですね。かけたパズルのピースを埋める楽しみを与えてくれるような作品、っていうか。
もちろんそこには見る側の理解力や想像力っていうのも求められるわけですが。「分からない、理解できない、面白くない、何も感じなかった」っていう反応があってもいいと思うし。
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とにかく11年ぶりにこの作品を見て、新たに発見した部分、当時と違った楽しみ方や感じ方ができる部分もあって、興味深かったです。
映画って見る者の心を映す鏡のような部分もあって、同じ作品を何年も経って改めて見てみる、っていうのも面白いもんだなあと思います。